君へ

君へ
山林の中で
道がわからなくなったことがある
何度も同じ道を
ぐるぐると歩き
時間は
深夜零時を過ぎていた
木の枝が
人の姿に見えた
大木が
ビルに見えたり
クレーン車に見えたりした
そのたびに
二人で喜んでは
落胆した
水筒の水も
残り少なくなっていた
それでも君は
ずっと僕につかまっていた
怒りもせず
僕を信じて
つかまっていた
残り少ない水を
僕にも分けてくれた
やがて朝が来た

偶然
歩いている人を見つけて
僕たちの歩いていた道が
間違っていなかったことを知った
無事に駅までたどり着き
家に帰ることができた
危ない目に
遭わせてしまって
父親失格だとは思う
あの夜のことを
僕も忘れられない
あれから
今もまだ
僕は暗闇の中を
ぐるぐる
迷いながら歩いている気がする
それでも
君の姿を見ていることが
僕にとっての
朝の光だった