そら

5.7.5.7.7

車のガラス窓には。

そら



車の窓ガラスには。


自分がどんなふうに歩いているのか、知りたい。

ちゃんと姿勢よく歩いているのだろうか。


ぼくは以前、「猫背」だと言われたことがある。


でも、姿勢が悪いことのたとえに猫を持ち出すのは、猫に対して失礼ではないだろうか。(笑)


ショーウィンドウに映る自分の姿を、さりげなく確かめている女性を見かけることがある。


映画『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイのように、胸を張って颯爽と歩けているか、見ているのだろうか。


ぼくの場合は、少し違う。

刑事コロンボのように、のそのそ歩いていないかを確かめている。(コロンボにも失礼!笑)


ただでさえ猫背で、おまけに右膝を痛めている。

無意識に右足をかばうような歩き方になっていないか、気になるのだ。


ところが、そんなときに限って、ショーウィンドウのガラスには街の風景が映り込み、自分の姿がよく見えない。


そこで、路上に停まっているワゴン車の、黒いスモークのかかった窓に自分の姿を映してみることがある。


車の窓ガラスには、少し猫背の男が、右膝をかばいながら歩いている。


やっぱり、格好よくはない。




窓の中では、走っている。


けれど、じっと見ていると、窓に映った男が、ふいに走りはじめる。


ランニングシャツ姿で腕を振り、ゴールへ向かっている。


空は青く、遠くには夕焼けが広がっている。

沿道では、大勢の人たちが手を振っている。


現実のぼくは、右膝をかばいながら歩いている。


それでも窓の中では、今も走りつづけている。